40歳を軽く超えるおっさんですが、おまじまいのエピソードお聞きください。もうかれこれ30年以上前の話になります。当時、うちの家には半野良や外飼いの猫が3匹ほどいました。ほとんどの時間、うちの台所周辺や庭にいてるのですが、時々外へ出ていくような出入自由な環境でした。ですから、雄猫なんかは一度出ていくと2~3日帰ってこない日もありましたが、だいたいは朝晩の点呼の時間じゃないですが、祖母が餌をやる時間や、炊事の時間帯には定位置でじっとしていました。ある時、一匹の猫が帰ってこなくなりました。1週間は超えていたと思います。まぁ雄猫の事やから喧嘩でもしてやられてしまったか、車に轢かれてしまったかなどと話していました。そんな時、うちの祖母がなにやら紙にマジックで書き始めました。「立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む」という短歌を書き上げました。たしか最後に猫の名前も書いていたと思います。その短歌を書きつけた紙を普段、猫が使っている食器代わりの洗面器の下にしきました。見ているこっちは「ポカーン」状態です。当時、私は中学生か高校一年くらいで、百人一首を憶える過大か何かで結構な歌を憶えていました。祖母が書き付けたのは、在原行平の歌で、百人一首では中納言行平になっている人の歌とわかりました。「立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む」は、行平が因幡守を仰せつかり、都を後にする時に読んだ歌とされています。「別れて因幡の国へ旅立ちますが、因幡の国にある山の峰に生えている松の木のように、私の帰りを待つと聞いたならすぐに戻ってきますよ」という意味の歌です。短歌で別れの歌では名歌とされているのですが、これが猫と何の関係があるのか全くわかりません。とにかく、洗面器の下に敷いた翌日か翌々日、いなくなってから2週間ぶりくらいに、行方不明の猫が帰ってきました。後日、祖母に聞いたら、昔から猫がいなくなった時のまじないみたいなもん。生きてたら大体帰ってくると言っていました。それからも何回か実行していました。その度に帰って来てましたから効果があったのかもしれません。それから20年くらい、いまから10年くらい前の、ひょうんな事からこの話をする事があって、話してみると、猫や犬を飼ってた人は結構知っていました。ただ、歌は同じなんですが、書き付けた紙の扱いが若干異なってました。ある人は玄関に貼る。ある人は上の句だけ書いて食器の下に入れるなど、かなりのバリエーションがありました。しかし、書き付けるうたみんな同じ「立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む」でした。
猫の帰るおまじない短歌を書きつけるだけで簡単
